当院では、重症・最重症のスギ花粉症(スギによる季節性アレルギー性鼻炎)に対して、抗IgE抗体治療薬であるゾレア®(オマリズマブ)を皮下注射する治療を保険適応で行うことができます。
従来の内服薬では鼻炎症状が治まらなかったり、眠気などの副作用のためより強力なものを使用できない方には、検討する価値の高い治療です。
この治療は、治療開始に先立ち治療の対象となるかどうかの確認や検査が必要となります。
この治療を希望する方は1月~2月上旬までに受診され、担当医と相談されることをお勧めします。
なお、ゾレア使用に関する診療には一定の時間を要します。月曜~水曜、金曜の午後外来にてゾレアの診療を行いますので、この日時での予約をお願いいたします。
<治療について>
治療期間
- 2月から4月が治療期間ですが、患者さまの状態やスギ花粉流行の状況により5月まで行う場合もあります。
治療方法
- 投与量:血液検査および体重をもとに決定します。
- 2週間もしくは4週間おきに、1回あたり1~4本の注射薬剤を皮下注射します。
治療費
- 注射薬剤費として1回あたり、3割負担で約4,500円から70,000円の間です(投与量によって金額が変わります)。
- その他に、受診、検査にかかる費用、同時に服用し続ける必要のある抗ヒスタミン薬の処方料がかかります。
- 治療費が高額になった場合は、高額療養費制度によって医療費の一部が払い戻される場合があります。
- 医療費控除によって税金が安くなる場合があります。
- 治療費などについて詳しくは、ノバルティスファーマ・ゾレア®「ゾレアの薬剤費」ページをご覧ください。
<治療の対象となる方>
下の1.~6.をすべて満たす方がゾレア®による治療の対象となります。
- 12歳以上で、体重が150kg以下の方
- スギ花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)の方
- スギ花粉症とその他(ハウスダストやダニに対するアレルギーなど)のアレルギー性鼻炎を両方持っている方は対象です。
- 逆に、スギ花粉症がない方は、それ以外の花粉症やアレルギー性鼻炎があっても対象にはなりません。
- 昨年のスギ花粉症によるくしゃみ・鼻水・鼻づまり症状が重症・最重症の方
- くしゃみ発作の回数が1日11回以上であったり、鼻水をかむ回数が1日11回以上であったり、一日中鼻づまりがひどい方は、重症や最重症の可能性があります。
- ご自身の症状の重症度は、ノバルティスファーマ・ゾレア®「重症花粉症とは」ページでご確認ください。
- 昨年のスギ花粉症に使用した内服薬と点鼻薬が確認できる方
- 当院以外で処方された方は、昨年の処方を覚えておくか、昨年の処方がわかるお薬手帳などを持参してください。
- 今年のスギ花粉症によるくしゃみ・鼻水・鼻づまり症状が重症・最重症で、内服薬と点鼻薬を1週間使用しても症状が改善しない方
- この治療によって症状が改善した方は、ゾレア®による治療の対象にはなりません。
- 治療前の検査で、アレルギー活性検査であるIgEの値が治療適応条件の範囲に入っている方
- 治療前のIgE検査は必須となります(以前の検査結果は利用できません)。
- この検査結果によっては、ゾレア®による治療を受けられないこともあります。
<治療までの流れ>
1回目受診時
- 昨年のスギ花粉症の症状が重症もしくは最重症であったことを確認します。
- 昨年のスギ花粉症に使用した内服薬と点鼻薬を確認します。
- 血液検査を行い、スギ特異的IgE抗体値と総IgE値を測定します(以前血液検査をされたことがある方でも、改めて血液検査が必要となります)。
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1週間、抗ヒスタミン薬の内服および点鼻ステロイド薬の噴霧による治療を行います。
抗ヒスタミン薬とは以下のようなお薬です。
ビラスチン(ビラノア)、デスロラタジン(デザレックス)、ルパタジン(ルパフィン)、オロパタジン、セチリジン、 レボセチリジン、フェキソフェナジン、エピナスチン、ベポタスチン、ロラタジン、エバスチンなど
点鼻ステロイド薬とは以下のようなお薬です。
モメタゾン(ナゾネックス)、フルチカゾン(アラミスト)、デキサメタゾン(エリザス)など
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2回目受診時
- 上記の治療を1週間以上行っても効果が低く、スギ花粉症の症状が重症もしくは最重症であることを確認します。
- スギ特異的IgE抗体値と総IgE値を確認し、ゾレア®による治療が可能かどうか判断します。
- ゾレア®による治療対象の場合、投与量と投与間隔を確認します。
- ゾレア®による治療について再確認を行い、注射費用などを考慮して、この治療法を行うか最終決定します。
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3回目受診時
- ゾレア®の皮下注射の1回目を行います。
- 投与数日後~2週間後に効果が出始め、効果の持続期間は1ヶ月と言われています。
<副作用について>
一般的な注射と同じように、副作用のほとんどが注射部位の発赤、腫れ、かゆみなどです。
また、多くのお薬にもその可能性があるように、ゾレア®にも稀ではありますがアナフィラキシーを引き起こす可能性があります。特に、初回注射後の数時間は注意が必要です。
呼吸困難、立ちくらみ、失神、蕁麻疹、全身のかゆみ、唇・舌・のどの腫れなどの症状が思いあたるようでしたら、速やかに医療機関に連絡してください。
<その他>
- ゾレアを使用しても、従来の抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)の併用が必要となります。
- 「原因が明らかでない慢性じんま疹」でもゾレアを使用することができます。詳しくは当院までご相談ください。
- その他、ゾレア®に関する詳細は、ノバルティスファーマ・ゾレア®の専用ページをご覧下さい。
参考)IgEとは
スギ花粉が鼻の粘膜に付着すると、体の免疫防御システムは「IgE」という免疫グロブリンを作ることでスギ花粉を排除しようとします。
このIgEにスギ花粉がくっつくことでヒスタミンという生理活性物質が大量に放出されてしまいます。
このヒスタミンが神経や分泌物を出す鼻腺、血管などにあるヒスタミン受容体にくっつき、くしゃみ、鼻汁、鼻づまりなどをひきおこします。
花粉症の患者さんは体にこのIgEがたくさん存在しています。
そのため、花粉症のシーズンになるとたくさんのスギ花粉がこのIgEとくっつき、過剰にくしゃみ、鼻汁、鼻づまりなどをひきおこします。
ゾレア®はこのIgEをブロックすることで過剰なくしゃみ、鼻汁、鼻づまりなどを抑制する効果が期待できる治療薬です。